26『サマー・キャンプ』

サマー・キャンプ
サマー・キャンプ』 長野まゆみ 文藝春秋 ¥1,048 ISBN4-16-318970-X
久々に読んだ長野作品。相変わらず、この人の文章には真夏のむっと濃い大気が詰まっているなと思う。容赦なく地面を焦がす太陽が髪の毛を焼くあの感じ。染色体異常だとかABITAS-C1(これは設定上の単語だと思うけど)などに絡めて次々と事実が上塗りされていって、温(ハル)のみならず読んでいるこちらまで混乱し通し。正直読み終えた直後である今現在でさえ人物関係が把握しきれてない。しかしながら後半、複雑怪奇な人間関係の中で温が発した一言が物語の核心を突きつつ読み手の生きている世界に対しても問いを投げかけているようで、長野作品て割と箱庭的というか、物語の外に出てこないなあ*1などという感想を抱いていた私としては新鮮に感じたのでした。
初めて長野まゆみを読んだのは中学の時かな……図書館で『新世界』を借りたのが最初だったはず。不思議な響きの名前だとか、まるきりファンタジーというわけでもなく、しかし現実的でない世界観が好きで読んでいました。あの頃は“蜜”の意味なんか分かっちゃいなかったんだなあ……若かった。

*1:世界観ががっちり固まっていて、読み手が自分をその場に滑り込ませる余裕が無い、て言えばいいのかな。日本語ムズカシイ。