throwcurve『ニューワールド ハートビート』

ニューワールド ハートビート

ニューワールド ハートビート

『ミライエコーE.P』のリリース以来、ライヴに行きたくともいけない日が続いていたので、収録曲をじっくり聴くのは今日が初めて。ライヴ会場で聴いたからタイトルすらわかんなかった曲もあったりするし。一通り聴き終えての全体的な感想としては、秋の空みたいなCDだなあという一言。薄い水色で、手を伸ばせば雲と空色が掻き回せそうなんだけど、現実には手が届かないくらい遠く高い空の持っている薄情さ。それがそのまま音になったような感じがした。『レディオフレンドリースロウカーヴ』から『REM』という流れの中で、ともすればてんでバラバラの方向へ飛んでいってしまいそうな個々の音が一本に収束しつつあったわけだけれども、本作ではその束が更に強固になったというか。なのに一本一本の糸の間に遊びがあるという矛盾が今回も感じ取れて面白い。
「サーモ」「水槽都市」はおなじみスロカ節*1。数小節先のメロディー予測が全然できないのは相変わらず。「せかいのまど」はアコースティックナンバー。「世の中には/馬鹿みたいな奴らが溢れて/厭になるんだよ」なんてシニカルな歌詞、なんだかミスチルのようだなあ。実際これ、桜井さんが歌っても変じゃないくらい。ファルセットが切なげで良い。「連れてって」のイントロはまたもスロカ節。メロディーラインがジェットコースターみたいに上がっては下がるのが笑い出しそうになるくらい面白いよ。「アルファ」は2003年(CD-Rは2002年)リリースの「前未来」から再録。この曲に限らず、アルバム全体に関しても言えることだけれど、約二年の間にバンド自体はもちろんのこと、ヴォーカルの歌唱力がすごく進歩しているのが良く分かる。感触で例えるとしたら、素手で紙風船をポンと打つのと、ラケットでバドミントンの羽根をパシュっと打つことの違いくらい?(ますます分かりにくい) ボーナストラック2曲は「無音ノート」「REM(アルバムまるごと一枚)」のリミックス。「無音ノート」改め「無音nooote」、随分アングラっぽくなった印象。サビのややサイケな感覚は嫌いではない。むしろ好き。「REMF」は……個人的には無い方がすっきり締まったんではないかと思ってしまうんだよなあ……切り張りしてる感が前面に出すぎていて、集中して聴けなかった。日が経ったら印象変わる可能性は、まあ私のことなので大いに有り得ることではあるけども。
何のかんのと申しましたが、リリースの度に色んな顔を見せてくれるいかしたバンドだと思うわけであります。ジャケを見て、今回はアートワークが落ち着いた感じなのね、なんて思ってたらどっこい。歌詞カードの裏側に描かれた二つの掌。傷だらけで血を流している左手を、天から伸ばされた右手が今まさに掴まんとするところ? 「離すなよ 右手を」*2じゃないけど、この先throwcurveがどんなところへ行くのか、その着地点へと有無を言わせぬ強さでもって「連れてって」ほしい。聴き終えてから二つの掌を眺めつつ、そんなことを思ったりした。以上!
あと、「連れてって」の一部、歌詞と歌が違う箇所があったけどわざとなんかな。
あと、ジャケ裏の小山さんの写真がとても良いと思います!
あと、トレイからCD外したとこの関山さんの写真がとても良いと思います!

*1:ツインギターのねじくれサウンド。ベースラインが面白い。バンドサウンドがそれぞれそっぽ向いてそうでまとまってたりする。小節の中を音で埋めようとしてない。などなど

*2:「アルファ」より