43『星の王子さま』

星の王子さま (集英社文庫)
星の王子さま (集英社文庫)』 池澤夏樹 集英社 ¥381 集英社 ISBN4-08-760494-2
本屋でななの13巻(頼まれもの)を探しているときに目に付いたので衝動的にお買い上げした一冊。内藤濯氏が訳した岩波のものは小学生の時に読んではいたけど、十年後に読むのとでは抱く感想が全然違う。昔は王子さまが結局最後どうなったのかちんぷんかんぷんで、面白みの無い話だなあなんて思っていたんだよね……がきんちょでしたから! それはさておき、ラストシーンよりも、中盤でのキツネとの会話がぐさぐさ胸に刺さって、帰りのバスの中でうるうるきてしまったよ。キツネは出会ったばかりの王子さまを、その時点では地球に10万人いる男の子のなかの一人に過ぎないと言い、更に、王子さまと遊ぶためには自分が飼い慣らされていないといけない*1と言う。で、

「きみが俺を飼い慣らしたら、おれときみは互いになくてはならない仲になる。(中略) でも、きみはおれにとって世界でたった一人の人になるんだ。おれもきみにとって世界でたった1匹の……」
P.197より

て続けるんですけど、これってとても素敵な台詞だなあって思いましたよ。キツネにとっては小麦畑は意味の無いものだけれど、王子さまに飼い慣らされると小麦畑の金色を見て王子さまを思い出すようになるだなんて。自分にとってそれまで全く意味を成さなかったものが、ある日を境にして劇的に(或いはゆっくりと)大切なものに変わるってことは恋愛にとっても往々にしてあることで、それを思ったら目頭が熱くなってしまって。でも自宅ならともかくバスの中でさめざめと泣くのはまずいよ、って我慢していたら、目から出ることを諦めた涙が方向転換して鼻を目指し始めたので、私は慌てて鼻をかんだのでした。何このオチ。倉橋訳も読みたいなあ。

*1:本書では「飼い慣らされる」=「絆を作ること」とされている。