部屋を吹き抜ける風がすっかり秋のそれで、もう8月も後半なのだということを知る。
安っぽい街灯に見下ろされながら家路を辿る間、いくつもいくつも転がる乾いた蝉の亡骸。数時間前、数日前までは昼夜を問わず何事かを喚いていた彼らは今や夜の風にかさかさと音を立てて揺れるだけの物体に過ぎない。日が落ちて、アスファルトに篭っていた熱が徐々に空へと放出されてゆくように、彼らの身体から抜け落ちた魂がゆらゆらと宙へ昇っていく光景を思った。足元に転がっていた蝉が断末魔の鳴き声を上げた。