41『月魚』

月魚 (角川文庫)
月魚 (角川文庫)』 三浦しをん 角川書店 ¥540 ISBN4-04-373602-9
とある古書店の3代目、本田真志喜と彼の友人で古書の卸を営む瀬名垣太一の二人が、お互いの過去に暗い影を落とす事件から目を背けたり向き合おうとしたり、でもお互いがお互いに見える口実として敢えて直視するのを避けていたりする話。蔵書を買い取るために出向いた素封家の屋敷で、思いがけず過去と直面せざるを得ない出来事が起こる。
はっきり言えば物足りない。物足りないー! 二人が互いに微妙な距離を保ち続ける理由になった人物の言動が想像していたよりたいしたことなかったというか、器が小さいと感じられたことが大きな理由。だからって人の命にかかわるような大事件が出てくれば満足というわけでは全くないのだけど。真志喜と瀬名垣の会話のテンポがとても好きだと思った。相手のことをよく知ってるからこそ叩ける軽口とか。『ロマンス小説の七日間』もそうだったけど、三浦しをんの小説は会話がいいなあって思います。まだ、2冊目とはいえ。
あとね、ちょっとBLめいた香りがしてお姉さんドキドキしちゃった!(何このキャラ) 真志喜は20代なのに普段から着流し姿なんですが、古書店で着流しときて、思わず中禅寺氏を思い浮かべてしまったのはもう仕方がないですよね。小説を読むときには頭の中で登場人物が(たいてい漫画絵で)動いてくれるんですけども、今回『月魚』を読むにあたっては榎本ナリコさんの絵が浮かびました。なぜだー。