14『約束』

約束
約束』 石田衣良 角川書店 ¥1400 ISBN4-04-873549-7
“バック・トゥ・ライフ”という言葉がキイらしい。喪失から人が再び立ち上がる過程を描いた短編集。そして私はあまりこの本を好きにはなれなかった。何故か。多分、読み進めていて“喪失”を感じ取れなかったからだと思う。前日に読んだ本の印象が強すぎてどこかで比較しながら読んでしまったせいかも。帯の裏に

苦しみから立ちあがり、
うつむいていた顔をあげて、
まっすぐに歩き出す人々の姿を
色鮮やかに切りとった、
絶対泣ける短編集。

という文がある。“絶対泣ける”てなんだよ。“泣ける”ことを売りにしてるのかな。そんなこと保証されたくない。読む前にこの文句を目にしてしまったので、素直な気持ちで読めなかったっていうのは多分にある、と思う。
それでも「ハートストーン」は好きだと思った。石を、手から手へ渡しながら温めるっていうのが気に入った。次点に「約束」。読むのはきつかったけど。テーマがテーマだけに仕方ないのかもしれないけれど、どこかご都合主義的という感じがしたのと(そして私はそういう話があまり好きではないことが今回はっきりした)、絶対泣ける、との文言にあざとさを感じてしまった。