72『西條八十詩集』

書影なし
西條八十詩集』 西條嫩子 角川書店 ¥260 ISBNなし

下北沢の古本屋で150円。昭和55年第八版だって。八十は人の意識の中にのみ存在する夢、希望、苦悩、感覚を詩に表したいと望んでいた、と解説にはあって、「梯子」という詩を読むにつけそれを実感するのでした。特に五連目、

待たるるは
月にそむきて
木犀の花片(はなびら)幽か
埋もれし女(ひと)の跫音(あしおと)

ここがたまらなく美しいと思う。見た目、文字の流れもそうだけど、声に乗せたときのリズムが素敵。

73『ツレがうつになりまして。』

ツレがうつになりまして。
ツレがうつになりまして。』 細川貂々 幻冬舎 ¥1,100 ISBN4-344-01143-0

「夜は、必ず、明ける」っていい言葉だなあ。私自身は病気ってわけではないんだけど(た、多分)、どうにも低空飛行で上昇する兆しが見られなくてもがいてる中、この本を読めたのは幸運だったと思う。NHKしか見られないツレ氏にめちゃめちゃ共感した。

74『わたしを離さないで』

わたしを離さないで
わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ 早川書房 ¥1,800 ISBN4-15-208719-6

解説から言葉を一部借りると、この小説は「細部まで抑制が効いて、入念に構成されて、感情があふれ出すぎりぎりのラインを決して踏み越えない小説」なのだろうな……という感想を持ちました。読み手の涙腺を決壊させようとする話が溢れている中(国内ではね)、この、泣き出す一歩手前の感情の震えから徐々に熱が引いていくような読後感を味わわせてくれる物語は貴重だなあ、と。面白いですこれは。知り合い全てに読めと薦めて回りたいくらい(はた迷惑!)。

75『邪魅の雫』

邪魅の雫 (講談社ノベルス)
邪魅の雫 (講談社ノベルス)』 京極夏彦 講談社 ¥1,680 ISBN4-06-182438-4

相変わらず寝ながら読むには厳しい厚さですこと。あいつがそいつでそいつがどいつ? って終始混乱しっぱなしで……読み終えて日数経ってるのにまだ頭ん中で整頓できてないです。ややこしいんだよ! 今に始まったことじゃないけど。各章の頭が「殺」「死」「亡」「人殺し」など穏やかでない言葉で統一(統一?)されてるのが不気味でよいなあ。何だか全体的に彩度の低い話だなあって思いつつ読んでいました。読んでる人の頭の中にどんな絵が浮かんでるか、10人いれば10通りの情景があるのは承知の上ですけど、どの場面も白っぽくて彩度が低かった。関口先生、お元気そうでなによりでした。ええほんとに。
ラストシーン、このシリーズの中でもかなり好きな方です*1。エノさん!

*1:ちなみに1位は「魍魎」

読書カテゴリの嵐。そうでもないかな。読了本はまだ数冊あるのだけどね。
今日は出かける用事があって昼過ぎに家を出たのはいいんだけど、行った先で道に迷って1時間もさまよった挙句、目的地に辿り着けずに帰ってきてしまった。ブーツで1時間も歩いたらば両足の裏に水ぶくれが出来て、足の裏ってことはまあ、当然潰れるわけで。歩幅が平常時の1/2になっちゃうんだもんなー。弱った。帰り道、電車の中で下手したら泣き出すくらいションボリしていたよ。あーあー。なにがそんなにショックだったかって、迷わないようにちゃんと事前に調べて地図まで持参していたのに迷ったということです。ちょっとひどすぎる。